唯一無二の圧倒的な何か。現代アートのスター・蔡國強展:帰去来@横浜美術館 に行って来たよ。

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久しぶりに横浜美術館に行ってきました。

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一瞬のうちに浮かび上がるもの

蔡國強は現代アートのスーパースター、余人には真似できない「圧倒的な何か」をもつアーティストです。

彼は主に火薬を使って、目に見えないものを表現する人。

火薬の爆発とともに、一瞬でそこにあるものが破壊され、別な何かに変容する。その変容の最中に、何か、すごく繊細で、普遍的なものが浮かび上がるんですね。

ポジティブなところだと「祝祭」とか「豊穣」とか、ネガティブなものだと「差別」「破壊」とかね。

ビデオで見ても彼の作品はとっても感動的なんですよ。

蔡國強さんと望郷の歌

蔡國強は、1957年生まれ。伝統的文化を破壊した文化大革命時代に多感な少年時代を過ごしたっていうから、アーティストの資質を持った少年には辛かったことでしょう。

天安門事件以降は日本に、その後ニューヨークに渡った彼は、共産主義への嫌悪を強く持ち続けたと言います。

そんな蔡國強が「帰去来」、故郷への帰還を銘打った展示会を行いました。

「帰去来(ききょらい)」というのは、中国の詩人・陶淵明による漢詩のタイトル。

三国志の時代の少し後、曹操の軍師・司馬懿の子孫が魏を滅ぼした後に作った王朝もまた滅びつつあった、そんな時代(5世紀くらい)に、陶淵明は辛い事ばかりの宮仕えを辞して故郷で清らかな田園生活に生きる決意を謳います。

この「帰去来」という言葉を「帰りなんいざ」と書き下したのは菅原道真。「さあ今こそ帰ろう」という意味ですが、詩情にあふれながら、格調の高い、凄い翻訳です。

帰りなんいざ
田園将に蕪れなんとす なんぞ帰らざる
既に自ら心を以て形の役となす
奚ぞ惆悵として独り悲しむや…

さあ帰ろう
故郷の田園が荒れようととしているのに、どうして帰られないでいられるだろう
自分の心をごまかし、苦悩することに何の意味があるだろう…

※現代文はわたしの適当意訳でございます。

といっても、陶淵明の実家は地方の大地主だし、陶淵明が公務員を辞めた時って王朝の入れ替わりの不安定な時期でしたので、詩の内容を真に受けちゃいけないと思いますけど、それはともかく「帰去来」という言葉は「望郷」の言葉になりました。

蔡さんは、故郷を離れて生きて来て、ようやくアートというものを中国に持って帰れるようになった、ということを語っています。

つまり今回の展示会は、彼が故郷に持ち帰りろうとしているものを表していると考えられるわけです。

現代アートによってもたらされるもの

おそらく、共産主義国家が一番理解できないものは現代アートだと思いますが、では、蔡國強さんが持ち帰ろうとしているものは何か。

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今回展示された作品のうちから読み解くとすれば、

「四季の循環」→豊穣信仰的な古代的な何か(かつて文革によって失われたもの)であり、恋愛であり、見えざる壁を破壊するという意志であろうと思います。

豊穣信仰は、陶淵明のもう一つの代表作が「桃花源記」であることからもわかりやすい。

そして、今回の大目玉である「鐘衝き」というこの有名な作品は、何かと内向きになりがちな中国文明の見えざる壁を壊したいという意味合いが込められてるんじゃないかな、と。

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↑99匹のオオカミのフィギュアが見えない壁に突き当たっていく

展示会公式サイトに掲載されていない、もう一つのシリーズでは、男女の性愛を描いていますが、この性愛というのも現代中国では正面から描かれていないものの一つですね。

しかし、彼の展示会とほぼ同時期に上海株式市場が暴落して、習近平が大閲兵式をしたっていうのはすごいなあ。

蔡國強さんは「選ばれた人」。人生がアートになっちゃってる。

写真転載元:横浜美術館 蔡國強展 帰去来


会期   2015年7月11日(土)~10月18日(日)

開館時間 10時~18時(入館は17時30分まで)
※夜間開館:2015年9月16日(水)、9月18日(金)は20時まで開館
(入館は19時30分まで)
休館日  木曜日

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