真田丸 第四十七回「反撃」レビュー〈2〉望みを捨てないものたちが。滅びへの道が希望から開かれる。

後半はいよいよ阿茶局の本領発揮です。

この時のために家康の数多い側室の中から阿茶が選ばれたといっても過言ではありません。斉藤由貴さんの飄々とした演技がいいんですわこれが。

相対する浅井三姉妹の次女・初は、宝塚娘役出身のはいだしょうこお姉さんです。上品で麗しい。しかし残念ながら相手は女狸。勝負の土俵が違いすぎました。

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女狸

●使者に推された初(常高院)は、自信がないと大蔵卿局を連れて行くことを希望します。

阿茶 vs 初+大蔵卿局なら、まだ本多佐渡 vs 有楽斎の方が勝負になるんじゃ…と視聴者の誰もが思ったと思います。が、ここは史実ですからしょうがない。

しかし、ここで幸村がファインプレー。なんときりちゃんをねじ込みます。

「お初様に付いていって、話がまずいことになったら何をしてもいいから一度ブレイクさせろ。お前にしかできぬ」真田丸史上最大の無茶振りをされたきりちゃん、最高だったなー。

●というわけで、京極忠高の陣で和睦交渉が始まります。

京極忠高は、初の夫・京極高次の庶長子ですね。

初と高次の間には子がなく、初は妹・江の娘を養女に迎えて側室の子である忠高と結婚させ、家を継がせました。つまり、忠高は徳川将軍家の婿でもありました。このころの京極家は若狭一国を預かる国持大名ですね。

つまり、徳川と豊臣、双方に縁が深いように見えて、すでに徳川体制に組み込まれて久しい京極家で和睦の陣が開かれたわけです。

徳川と豊臣の間を取り持とうとする女性達と、敵対関係にあって落とし所を探す男性達の動きが面白いなあ。同じようで居てちょっとすれ違ってる。

ちなみに、「江」のときは斎藤工さんが京極高次を演じました。向井理の秀忠に勝るとも劣らない無駄遣いっぷりで、私、これについては今でも憤怒の形相で語れますわよ。

和睦の条件

●さて和睦交渉ですが、予想通りというべきか、予想以上にちょろかったと言うべきか、大蔵卿局が阿茶局にすっかり手玉に取られてしましまいます。

「男達が勝手に始めた戦の始末を、私たち女がするというのは愉快なものですね」と話を始めた阿茶は、なぜか大坂方にめっさ譲歩します。

「お上様は江戸にきていただかなくても結構です。右大臣様は大坂城にこのまま居てくださって結構です。お国替えをお望みでしたら、何なりと希望をおっしゃってください。牢人達の処罰もしません」

と、いいことづくめの話をしたあとにこやかに微笑みながら

「あとはおいおい決めていきましょう^^」。

どう考えても後出しジャンケンを狙っているというか、アンカーリングの罠です。

●初は不安を覚えますが、話に割って入ることができません。

ここできりちゃんが幸村の指示通り、「足が釣ったー!」と床に身を投げ出しゴロゴロと転がって話を切り、初にアイコンタクト!とかなりシュールなブレイクをぶっ込みます。

前半の信之の浮気現場踏み込みは、このシュールなきりちゃんの地獄の女子会殴り込みとバランスを取るために設定されたんじゃ、というくらい面白かったですww

●初は急いで、領地を増やして欲しいと言う話をし、所領を増やしてもらわないと牢人達が困ってしまいますと言い募りますが、もうね、可憐で儚くて美しくてね、どうやったって阿茶局と、もともと目的が一致しない上に手玉に取られている大蔵卿相手に勝てるはずがない。

と絵面でわからせる説得力がすごい。

●阿茶はきりちゃんを完全スルーしつつもちょっとだけイラっとした顔をして、「ではこうしましょう。大坂城の堀を埋め、真田丸も取り壊してしまいましょう。そすればもう戦はできませんから、牢人達は出て行かざるを得なくなる」「大坂城から牢人達が出て行けば勝手に戦をするものが居なくなります。大御所様も安心だし、右大臣様も安泰です」とすっとぼけた提案をします。

なんという高度なテクニックか。

これが大蔵卿局にまた一層響くんですね。牢人達を追い出し、その上で大坂城での自分たちと茶々たち親子の生活を守りたいというのが、大蔵卿局の望みですから。

きりちゃんと初は再度交渉を止めようとしますが(2回目の方が長澤まさみの美脚がよく見えました!)、結局、大蔵卿局と阿茶局に押しきれられてしまうのでした。

こうして堀が埋められ、真田丸が破却されることが決まります。

●もちろん徳川型は狙い通りの展開に大喜びです。

約束とは

●君臣一致の徳川と違い、大坂型は和睦交渉という超!重大!交渉の内容の把握すらすぐにできません。

交渉の結果を記した書状は手元に届きましたが、そにには堀の埋め立てと真田丸の破却は記されておらず、大坂方に有利すぎる条件での和睦を幸村は不審に思います。

しかし詳しい話を聞こうとしても、初に会うには大坂方の仲介を経なくてはなりません。(大野治長がまたびっくりするくらい気が利かないんですよ)。

しかも初は寝込んでしまったとのこと。疲労と罪悪感のせいですかね。でも初を勝手に推したのは幸村なんでしょうがないですね。

幸村はきりちゃんに書状を見せ、そこで初めて詳細を知ります。

このグダグダ感、豊臣がダメであるという描写がうますぎるわ。

●堀を埋め立てる、真田丸を破却するという口約束を知った幸村と修理は、初めて大蔵卿局を怒鳴りつけます。

「なんと愚かな。戦えぬ我らに、家康が約定を守るとお思いか」

「母上は豊臣を滅ぼすおつもりか」

そうなんですよ、約束とは相手に守らせなければ意味がなく、そのための担保は、究極をいえば腕力なんですよ。それを大蔵卿局は良かれと思って自ら捨てたわけです。

●大蔵卿局は「全ては豊臣のため」と開き直り、有楽斎は「これでよかったのじゃ」と天を仰ぎます。

大坂城は外堀も内堀も埋め立てられ、本丸のみを残した裸城となってしまったのでした。

●ここは外堀だけを埋めるつもりが徳川型が内堀まで勝手に埋めてしまったという従来の説とを覆し、もともと外堀も内堀も埋めるのが和睦条件だった、とう近年の研究結果に基づいた作劇ですね。

●徳川型は大坂城を丸裸にした上で、大坂方の方から和睦を破らせるよう仕向ける算段です。「これが城攻めよ!」と破顔する大御所。完全に悪役の顔でしたね!イキイキ!!

望みを捨てない者の前にのみ

●幸村は牢人達に和睦の話をします。もう戦いようがない、申し訳ない、と頭を下げたあと、幸村は「城を枕に討ち死になどとはゆめ思わないように」と釘をさします。

長宗我部家の復興が実現できないと知った盛親は立ち去ろうとし、団右衛門もそれに続こうするのを、後藤又兵衛が止めます。

「行く場所がねえ奴らがここに集まったんじゃねえのかよ!」

そうなんです。一度行くあてのない牢人達を集めてしまったからには、勝負をつけるしかないんです。豊臣家も幸村も、認識が甘すぎた…

●幸村は家族を上田の兄の元に逃がそうとしますが、この時幸村は自らの死をすでに覚悟していたと思うんですね。

和睦が成ったことで、むしろ幸村の身の上は危うく成った。

徳川が自分を見逃すはずがないこと、兄の上田沼田藩のためには自分がどこかで死ぬしかないことを知っていただろうと思います。

そんななかで、家族の生存にだけは望みをかけたのがちょっと泣けますね。

●しかし牢人達は幸村の元に集ってしまった。秀頼もやってきて望みを捨てないと言い出した。

●私はここで牢人達・秀頼に応えてしまう幸村をみて、なんとも言えない気分になりました。

ここぞという時の戦略眼のなさを、1年かけて丁寧に描いてきたからこその説得力。おとり様から受け継いだ「最後まで望みを捨てないものの前にのみ道は拓ける」という言葉。

華々しい滅びへの道が開かれた。しかもそれは望みから開かれたのです。

辛い。しかし つ づ く。

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