2015年前半最大の外交イベント(になってしまった)、安倍首相訪米の顛末〈2〉

Fotocitizen / Pixabay

安倍首相の上下院合同演説を阻止しようとしたオールコリアの話の2回目。〈前回〉はこちら。

ウォッチャーさんたちの注目を集めたこのイベントに韓国が負けるのは最初から決まっていました。

なぜならば、これは日米同盟の話であって、日米韓の話ではないからです。

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利害関係と歴史問題

日米が親密なのは中国・ロシアという共通した敵国を持ち、海洋支配を望むという点でも利害が一致するから。

日米はもともと海洋権益を非常に重視していますが(というかそもそも太平洋戦争が太平洋の西側とインド洋を繋ぐ東南アジアの回路を巡る日米の権益争い)、中国もこれまで歴史的に興味を示してこなかった「海洋」に眼を向け、ここ数年は海洋権益の拡張を目指しています。

なぜ「海洋」なのかというと、大量の物資を運ぶのに海運以上に効率的なものはないからです。

アメリカはまず自分たちが安全に海を利用するために、世界最大の海軍を持って海上の安全を守っている。アメリカの同盟国はそこにアクセスを許される。

アメリカは同盟国に海の安全を保証することで、世界の覇権を握っています。

そして今、日本がその覇権の一部を担うことで、日米はお互いの安全保障を強化しようとしている。

そういう大きな利害関係の、しかも他国間の話に、第三国である韓国が終わってしまった過去の話で割って入ろうとするのはなんとも不思議な話ですが、彼らはそうしないではいられないのでしょうがない。

歴史問題で韓国と共闘する中国は、AIIBで日米、特に日本の協力を望んでいましたので、演説阻止のような動きは表立ってありませんでした。

それどころか、安倍首相訪米の直前4月23日にインドネシア・ジャカルタのパンドン会議で日中首脳会談まで開いてしまう始末。

日中首脳会談がこのパンドン会議の席で急遽行われたというのもおもしろく、第二次世界大戦後に独立したアジア・アフリカの国家による反帝国主義・反植民地主義を謳った国家元首・首相が参加するクラス国際会議で、両国の関係改善のために日中が会ったということは、中国はこの後の安倍首相訪米の結果をある程度見通していたということになります。

つまり日本(というか日米)との決定的な対立は避けた。

中国のことだから、表立っては動かなかっただけで、絶対韓国の慰安婦ロビー活動に資金は提供していたと思いますけれども。

雉も鳴かずば…

4月26日に渡米してからの安倍首相は、大変な歓迎を受けます。リンカーン記念館へのサプライズ訪問もその一つ。

しかし最大のイベントはやはり、4月29日に行われる上下院合同演説でした。

先帝・昭和天皇の誕生日に行われるということも象徴的ですよね。さあ未来志向の話をしろ、とアメリカに言われているにも等しいこの演説を安倍首相はどうまとめたか。

●先の大戦への反省
●日本と戦ったアメリカ兵への深い哀悼
●硫黄島の司令官だった栗林大将の孫である新藤前総務大臣と、硫黄島での戦闘に参加したローレンス・スノーデン予備役中将との握手というサプライズ演出
●戦後日本の平和的歩み。日本に続いて発展しようとするアジア各国を真摯に援助した実績
●アメリカと日本の紐帯の強調

アメリカの求める同盟強化に答え、名誉の席にふさわしい感動的な演出を用意し、日本国民の自負であるアジア諸国への援助もつつがなく主張に盛り込まれています。

内容的にサプライズはなく、これが歴史的名演説かというと決してそうではありませんが、オバマ政権の求めに巧みに応えたこの演説は、安倍首相は頭の良い前向きな政治家だ、という印象を十分に与えるものでした。

今アメリカが日本に求めているのは、過去への反省じゃなくて対中・対ロで共闘してくれる信頼のおける(大人の)同盟国であることなんですよね。

で、日本に過去への謝罪を求め続ける中国・韓国の反応はどうであったかというと、パンドン会議で関係改善を印象づけていた中国は多少の注文をつけたものの、だいたいのところスルーと言って良い状態。

韓国は大変なショックを受けるのですが、そもそもあんなに騒がなければここまではっきりとした外交的敗北にならなかったんじゃないの? という気がすごくします。

決定的敗北を避けるっていうのも知恵でしょ…。

国家存亡の危機扱い

上下院演説後の韓国メディアの反応はなかなか激しく、大げさなところで国家存亡の危機扱いでした。

韓国の「反日」は、国民に共有される価値観であり、国家設立の正統性を説明するものであり、日米韓の枠組みに深入りせずにいつでも中国に傾斜するための便利なカードでした。

しかしそれを見抜いたアメリカが正面切って「日本とアメリカは和解した。未来の利益のために過去の軋轢を乗り越えた」ってやっちゃったんだから、大変なことです。

そもそも1年前のオバマ大統領の訪韓時から、アメリカは「未来志向」と言っていたし、途中何度も韓国に強力に歴史カードを使うのをやめろ、とメッセージを送っていました。

シャーマン発言なんてその最たるものですが、韓国は歴史カードに代わる代案を出せず、無策のままここまで来てしまいました。

アメリカ政府が「歴史問題はだいたい終わった」という態度を打ち出した以上、アカデミズム、他国政府も追随していき、時間はかかるでしょうが、謝罪を受け入れない韓国を冷ややかに見るようになるでしょう。

安倍首相の演説には韓国への挑発もちゃんと入れてあり、

米国が自らの市場を開け放ち、世界経済に自由を求めて育てた戦後経済システムによって、最も早くから、最大の便益を得たのは、日本です。
下って1980年代以降、韓国が、台湾が、ASEAN諸国が、やがて中国が勃興します。今度は日本も、資本と、技術を献身的に注ぎ、彼らの成長を支えました。一方米国で、日本は外国勢として2位、英国に次ぐ数の雇用を作り出しました。

と、まず日本が韓国を含むアジア諸国を援助したという、韓国としては言われたくない過去を述べつつ、

日本は豪州、インドと、戦略的な関係を深めました。ASEANの国々や韓国と、多面にわたる協力を深めていきます。
日米同盟を基軸とし、これらの仲間が加わると、私たちの地域は格段に安定します。

日米同盟が基軸であり、韓米あるいは日韓関係をそこに加わるものとしています。

さらに韓国をASEANと同列に並べることで、日本の韓国への心理的距離を表しました(韓国はASEAN諸国を格下と考えているので、ASEANと同列あるいはASEANの後に韓国を置いたのもかなりの挑発ですね)。

日本のこの態度をアメリカが支持したことに、おそらく外部が想像する以上の危機感があったのでしょうが、でも国家存亡ってほどかなあ??

終わらなかったのでつづきます。

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