真田丸 第三十三回「動乱」レビュー〈1〉石田治部が狸に挑む一回目。徳川内府&本田サドという狸のタッグ。

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前回に続いて、これでもかこれでもかと、石田治部少輔の失敗が描かれます。

人望がないことよりも、これからどういう風にことを運び、どこに落ち着かせるのか、それは成功の見込みがどれくらいあるか、三成に味方する人に何かメリットがあるのか、という視点が三成に決定的に欠けていることの方がよっぽど問題なのですよねー。とほほ。

では、早速レビューしてみましょう。

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徳川を討つ

●前回ラストで「徳川を討つ」と決意した石田治部は、豊臣家の御一門である宇喜多秀家、小早川秀秋にことを計ります。

とはいえ、実行は石田家だけでやるつもりと言う石田治部(まあ家臣ですし当然です)。ここで「三成に過ぎたるもの」として有名な島左近が登場。真田丸の左近は、モサモサしつつも眼光鋭いイケオジでした。眼福です。

●今回の主な舞台は伏見城内に設けられた石田治部専用の曲輪・治部少輔丸なのですが、信繁はこの中で意外な人物に再会します。北条氏政に仕えていた外交僧の板部岡江雪斎です。

北条滅亡後、諸国を放浪し、今は金吾中納言(小早川秀秋)に仕えているという江雪斎と、信繁は再会を喜びあいます。

●しかし、江雪斎はただ金吾に仕えているわけではありませんでした。彼は本多正信のスパイだったのです。つまり治部の夜襲計画をさくっと正信に知らせたのはこの方でした。

というか、なんで気がつかないの信繁ェ、と唖然とする思い。昌幸あたりが江雪斎が金吾に仕えていると聞いたらすぐにピンときそうなんですが…

これも信繁の政治的才能の欠如の表現なんでしょうか。

今回は若い武将たちのひよっこぶりが描かれるんですが、間違いなく信繁もその中に含まれているなあと思いましたよ・・

●とはいえ、信繁も「ここで徳川様を討って本当に良いのか」と大変迷っています。

しかしことが決まったからには「討ち漏らしてはならぬ」と、陽動の上、徳川邸のお隣、宇喜多秀家邸からハシゴをかけて侵入するという見事な策を立てます。即採用。

非常のもの:本多正信

●家康は自身の暗殺計画を知り、「まだ死にとうはないわ」ととっとと江戸に帰ろうとしますが、正信はそれを「ここで逃げては末代までの恥」と止めます。

それよりも治部の暗殺計画を公にし、豊臣恩顧の大名たちに協力を要請、彼らがどれだけ徳川の役に立つか見極めようと提案。

石田vs徳川ではなく、豊臣家家臣の内紛のテーゼをシフトさせる、真っ黒い策謀です。

これの何が黒いって、これは要するに豊臣秀吉の業績を傷つけるものなんです。

織田家の簒奪者であるが、その後戦のない平和を築いた(から簒奪はノーカン)ということが、秀吉の天下人としての正当性であるのに、その秀吉の死後すぐに家臣たちが政権内部の権力争いで揉める。

秀吉の死の公表まもない時に起こったこのスキャンダルは、豊臣家の正当性を疑わせるに十分に足るものです。

ちなみに豊臣家の家臣であるとは言っても、外様である徳川家にとって、豊臣家の瑕疵なんて何でもありません。当事者ではありますが、高みの見物も決め込めるという、徳川にとってwinしかないのが正信の策なのでした。

まさに非常のもの、腸が腐っている男(褒めてます)。

こうやって政治局面と人情をコントロールできる軍師がついていることが、家康最大のアドバンテージです。

●家康はこれに乗ることにします(正信の思惑をパッと理解する家康もやはりすごい)。

●武の方を担当するもう一人の本多の方も、やる気に満ち満ち、完全武装で襲撃に備えます。

藤岡さんが「儂の本分がきたわ!」って感じで目を爛々と輝かせながら、腹の底から声を出して兵士たちに檄を飛ばすのが、怖いったらなかったです。

もう信幸兄上が舅を恐れるの、笑えない・・・いやでも笑っちゃうと思うけどww

●徳川邸の様子の変化は直ちに治部少丸に伝えられます。お隣が宇喜多さんちだから当然ですね。奇襲はことを起こす前に失敗です。

しかし石田治部は家康の首を諦めません。

家康vs他の大老の状況に持ち込むべく、信繁には上杉の、金吾には毛利の説得を頼み、自分は秀頼(の後見の前田大納言)から家康討伐の許しを得るため、大坂に向かいます。

豊臣官僚として

●金吾は毛利の説得には気が重いといい、見るからに無理そうな気配。

上杉に協力を依頼に行った信繁も、セコム直江兼続の鉄壁の防御によりあっさり断られてしまいます。

●信繁はその後大谷邸に向かって刑部に報告・相談のついでに介護、その後真田邸に戻って家族にも相談と、お忙しい。

真田邸では、徳川方が大名に配っている書状を目にします。そこには「平和を乱す石田治部が太閤殿下のご遺徳に背いて徳川邸襲撃を企んでいる」とはっきり書かれてしまっていました。

信幸は石田治部はどうするおつもりなのだ、と若干心配そう。

ちなみに真田家は、父と長男で対応が違いまして、昌幸は要請をスルー、信幸は顔だけ出すという方針で対応することになります。

これはかつて上田城を徳川に普請させてる間は昌幸は徳川と組み、沼田を北条から守るために矢沢の大叔父上は上杉と組みつつ、真田け内部では通じ合っていたという、真田の強かな二家体制の再現ですね。

●信幸は信繁が石田治部に支えていることで、兄弟が敵味方になるのではないかと心配します。

●しかし、そこに北政所さまがお呼びですときりちゃんが走ってきます。

秀吉の正室に気安く呼び出され、当然のように呼び出しに応じる弟。豊臣家こそが天下人と疑う様子もない信繁を、信幸は複雑な表情を浮かべて見送るのでした。

北政所

●寧は、石田治部の襲撃計画についてすでに知っていて、「とんでもないこと」「すぐに辞めさせなさい」と信繁に命じます。

横には金吾中納言の姿があり、さてはこいつがちくったのか思いきや、意外でもなんでもないのですが、先にことの次第を寧に知らせたのは加藤清正と福島正則ということが明らかになります。

全てを把握した上で、寧は豊臣家のために徳川家康を支持するよう二人に命じて胃ました。

●未亡人である寧にとっては、夫の誇りと業績、そして家名を守ることがお仕事。

寧も、そして後半で刑部も同じことを言うのですが、戦のない世を作ったというのが、豊臣秀吉の最大の功績であり、簒奪も苛烈な政治も、その一点のために必要なことであったという理論武装をしています。

太閤の平和を乱させないということは、豊臣家の今後の存続のための「大義」でもある。

そして寧は天下を治めるにはどういった才能が必要なのか、夫を具に見てよく知っています。

現時点では秀頼ではどうしようもない、かといって官僚の石田治部が世を治めるのは論外(と寧はよくわかっている)。

何回か前に「あんたたちが何もかもあのひとに背負わせるから(秀吉の負担が重すぎて弱っていくんでしょ)」と大声を出すシーンがありましたが、寧から見るとそうなんですよね。

しかし、秀吉ほどの聡明さを持った後継者はあの時点ではいなかったし、代役たりえた刑部も病に倒れてしまい、みっちゃんの持つ官僚的才覚ではどうしようもなかった…

秀吉の晩年の出来事は、彼から死後の準備をする時間を奪ってしまいました。

秀頼の誕生、秀次事件、朝鮮出兵、そして地震。

●秀吉の正室にふさわしい大変聡明な女性ではあるけれども、寧もまた秀吉の正室という以上でも以下でもありません。

子飼いの武将たちに大きな影響力はあるけれど、彼女を担ぎ上げるような勢力はない。つまり彼女に直接の力はない。

状況をよく見て理解している、良くないと思ったことは正しく否定する、だけどではどうするか(徳川に権力を移譲して生き残るしかない)ということまで責任もって発言できない。

寧の立場も苦しいものです。

治部を直接呼びつけないのは、そうしたことにより、今後自分がお困りごと相談所になることを恐れたせいでしょう。

●で、寧は、そう言った様々なことを現在の治部がちっとも理解しないことを訝しみ、賢いと思ってたけど自分の買いかぶりだったのかと失望します

秀吉が弱っていくに従い、治部の切れも鈍くなってしまった。

秀吉は苛烈でしたが、周囲の才能を引き出し、引き上げる力があり、みっちゃんはその恩恵をもっとも受けた一人だったのかもしれないですね。

警備と酒宴

●北政所の厳しい態度を見て、信繁は初めてきりに意見を求めます。「お前は煩わしいことも多いけど、物事を偏りなく見ている」

褒められている気がしないとプリプリ怒りながら(可愛い♡)、きりちゃんは「石田さまは本当はしまったと思ってるんじゃないか。自分から言い出した事だし、プライドの高い人だし、引くに引けなくて困ってるんんじゃないか」と、大変まっとうな意見を述べ、信繁はきりに感心します。

信繁がようやく。ようやく・・・・(号泣)

●信幸は鎧支度の上、徳川邸に顔を出しますが、想像以上にものものしい警備がされていて驚きます。

●賢明な信幸は通された侍溜で目立たないよう振舞おうとしますが、すぐに舅に見つかって大名たちに「うちの自慢の婿です!」と思っ切り紹介されてしまいます。

大名たちが「おお!?」とどよめくのは、彼が戦国のレジェンド真田安房守の息子で、もう一人のレジェンド本多忠勝の婿だからでしょうか。それとも優しさかな?

●しかし、この大名たちときたら、警備に来て酒を振舞われて呑んだくれてるんだから、しょうがないですね。

まあ正信・正純の真っ黒い笑顔からして、下手に先手を打ちましょうとか頑張られても困るし、酒でも飲ましておいた方が扱いが楽ってことなんでしょうが、それにしたってちょろすぎですよ!

そんな中、やればできる子・伊達政宗は「わしらが付いていますから、徳川様は安心してください。鎧支度なんて必要ナイナイ」と調子よく空気をリードして、正信の思惑に応えてみせます。正信、超うれしそうでしたね。

●信幸は「大名たちを試すつもり」という家康の魂胆を見抜きます。

千成瓢箪

●徳川邸での大名たちの面白むさい酒宴の最中、家康を襲った刺客が治部の手のものだった(のではないか)という話が出てきます。

それを聞いた加藤清正が土器を拳でぶち破る勢いで切れると、なぜか治部少丸にやってきて佐吉に会わせろと信繁に詰め寄ります。

●その頃、石田治部は前田大納言に、太閤秀吉の馬印(大将の居場所をしめすもの)である千成瓢箪を借り受け、それを持って徳川を打ちたいと申し出ます。

千成瓢箪は秀吉の象徴ですね。これを貸し与えることは、徳川を討つ許可を秀頼が与えたことになってしまう。

なぜか同席を許された(茶々の名代ということかな)大蔵卿局がものすごく反対するのですが、頭のあまりよくない女が淀殿・秀頼の場内での権勢を笠に着て、ここぞとばかりに居丈高に振る舞うのがすごかった…

峯村リエさんの徹底した演技すごい。

●利家(前田大納言)は「諦めよ」と取り合いません。

●この徳川と石田の内紛の件は、茶々には知らされません。片桐且元・大蔵卿局は、茶々を溺愛するあまり、一人前の大人として扱わない。破滅への道がまた補強されます…

というわけで〈2〉に続く。

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真田丸 完全版 第弐集 [Blu-ray]

映像特典ディスクがすごいことになるらしいですね。

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コメント

  1. 軒しのぶ より:

    >大名たちが「おお!?」とどよめくのは、彼が戦国のレジェンド真田安房守の息子で、もう一人のレジェンド本多忠勝の婿だからでしょうか。それとも優しさかな?

    まあそれもあります。ただ合戦場面が少ないのと私生活面では不憫(笑)なのでドラマ中では印象が薄いのですが、真田のお兄ちゃん、戦闘指揮官としても、とっても優秀です。天正壬午の乱から第一次上田合戦にかけての親父のレジェンドの片腕でもありますので。この時点では弟より戦歴は知れ渡っているのです。そのうえレジェンド忠勝が自慢しまくるものだから、みんなのこの反応は当然。(お兄ちゃんはちょっと困ってますが。そのあたりがまた不憫)

    それにしても、治部がどんどん痛々しい…家康君が好きな私でも、誰かこいつなんとかやってくれ、と思ってしまう。

    • アンチョビ より:

      >軒さま

      コメントありがとうございます。
      信幸兄上の活躍をもっと描写をして欲しかったなーと、と。
      不憫な兄上という楽しいもののために切り捨てた作劇上の工夫だろうから、しょうがないところですが、ちょっともったいなかったと思ったのでした。

      • 軒しのぶ より:

        そうですね。
        まあ、ここのお兄ちゃんの凄味は、徳川屋敷に来て五分で、正信と家康の狙い「誰が味方になるかを測っている」を見抜いてのけたところですね。そこまで看破した人は、他にいないのではないでしょうか。
         信繁と治部はたぶん気づいていない、というところが辛い…

        • アンチョビ より:

          >軒さま

          知略面の描写はすごくいいですね。
          並み居る若手大名たちがきゃっきゃうふふと酒盛りする中、冷静に家康の魂胆を見抜く兄上、かっこよいなと思いました♡

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