真田丸 第二十回「前兆」レビュー〈2〉複雑な秀吉の気持ち。秀吉を慕い苦しむ三成の気持ち。信繁はもっと修行しましょう。

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後半です。

落書事件の犯人探しは、コナンか金田一か古畑任三郎かっていう、推理もののテンプレを使ってサクサク行われるのですが、テンプレに盛り込まれた内容はヘビーでした。

理詰めでものを考えすぎて、秀吉の気持ちも三成の気持ちもイマイチわからない信繁であり、

才気に走るあまり上司をないがしろにする信繁であり、

中世以来の寺社の聖域の変容であり、

新しい時代をどう生きていいかわからない人々であり、

信繁の理詰めの推理とは対照的に、どんどん狂気にとらわれていく秀吉であり、

新入社員の正論と尊敬する社長への配慮で板挟みになる中間管理職三成であり。。。

他にも4つ5つ言えそうですが、レビューに移りましょう。ああ。

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寺社というアジール

●馬廻衆筆頭の平野様と部下・信繁は現場確認の上、門番から話を聞きます。

ここで信繁が才気の冴えを見せ、どんどん状況から犯人をプロファイリングし、推理を進めていきます。

でも、先日再放送された「英雄たちの選択」の中で、真田信繁という人は「上司の話を遮って話し出す」ことが多くの文書に残っていることが指摘されていたので、平野様を遮って治部殿に直言したりするたびにヒヤヒヤしてしまった…

大野治長と秀頼にも同じ調子でやってしまい、政治力をどんどん失っていく前振りじゃないだろうなコレ💦

●で、状況証拠を整理するに、どうも門番の道休という男が怪しいんじゃないかということで信繁と平野様は治部に報告します。寺社勢力に詳しい治部は、道休は法名だろう、おそらく坊主の多い本願寺に逃げ込んでいるに違いない、と推察します。

●治部の読み通り、道休は本願寺に逃げ込んでいました。が、本願寺は、道休の引渡しを「御仏にすがってきたものを見捨てることはできない」と素気無く拒みます。

これはさらっと描写されていますけど、本願寺=アジールですね。

●中世までは、寺社仏閣の多くに「不入(入らず)」法が認められていまして、ここに一度逃げ込んだものは、たとえ殺人であっても、俗世で犯した罪咎から逃れることができました。

そういう俗世の統治から免れ得る場所を、文化人類学的にアジール(聖域)と呼びます。

なぜ寺社仏閣がアジールを持つに至ったかというと、寺社の前に「市場」が立つのと同じ理由で、神仏によって縁の浄化・聖化=断絶がなされるからです。

昔の人は、俗世の権力の及ばない空白の場所をあえて作ることで、社会のバランスを取っていたのですね。それが宗教的空間の役割と結びつきました。

とはいえ、アジールはユートピアではなく、大変厳しい世界でした。

すべての縁が絶たれた状態ですので、貧しく、食事も思うようにならず、かといってアジールを出ることもできず、餓死するようなこともあったそうです。

それでも社会の隙間に、大変厳しい自由の空間があったというのは、魅力的な話なのですが、日本の場合、お寺は僧兵という強大な軍事力も持ってましたから結構物騒な話でもあり、そしてそのために戦国の三英傑はことごとくこれを潰していきます。

(縁切り寺として有名な鎌倉の東慶寺は、このアジールの名残り)

●というわけで、だいぶ権力に削られていた本願寺は、豊臣秀長の書状にあっさり応じて、道休の取り調べを許します。

三成に書状を渡しながら、「病になどなっている場合ではないな」という秀長は本当に具合が悪そう。石田治部はなんとも不安そうな、痛ましそうな表情を浮かべます。何かを背負い込もうとしているように見えて仕方がありません。

●しかし、平野と信繁に、道休は「落書は俺がやったんじゃない。俺は字が読めないんだよ」と明かし、犯人探しは振り出しに。

狂気

●ところで大谷刑部はこの件がバカらしくて仕方がありません。「茶々様のお腹の子の父親は誰かって、腹がたつのはわかるけど、たかが落書じゃない。どうしてそんなに目くじらをたてるの?」「殿下に直接申し上げるの、全然やぶさかじゃない」

慌てて止める三成が可愛かったですww

●で、刑部を止めた手前、三成が秀吉を諌めることになるのですが、却って逆鱗に触れしてしまい「手ぬるい!」と叱責を受ける羽目に。

しかも秀吉は聚楽第の門番たち17名に改めて怒りを向け、にすることを命じます。

これは治部には辛い。

●信繁はきりを通して秀次にとりなしを頼みます。

秀次は「きりの頼みならなんでも聞いてやろう」と調子がいいのですが、「殿下をお止めしてください」と言われてさすがに躊躇します。

しかもきりちゃんは「バカなことをするなって言えばいいんじゃないですか」だし、信繁はいつもの「理に立ちすぎる」癖が出て「落書は殿下が民に慕われている証拠」とか言い出しちゃうし、もうまるでてんでダメです。

薫さまが叱った「おまえはどうしてそんなに小細工ばっかりするのか」というお小言が沁みるわ・・・

●案の定、秀次の諫言は却って火に油を注いでしまい、秀吉はマジ切れします。

●秀次を使うことに失敗した信繁は、今度は治部に秀吉をなぜ止めないのかと訴えます。信繁、お前は全然ダメなんだが、本当にどうしたものか。

●治部が門番たちを救えず、秀吉を止められずに苦しんでいることは、妻のうたさんも非常に案じていて、信繁に「殿は今日は一人でずっとお酒を飲んでいます。いくら飲んでも酔えないと言いながら」と夫をフォロー。

清正が「親父は俺たちと一緒に野山を駆け回っているべき」と泥酔していた意味を、今、三成はいくら飲んでも酔えない酒で飲みくだしているのです。

●やりきれない信繁は再びきりの元へ。きりもまた憤りを抱えて、二人で愚痴大会になるのですが、そこに北政所が現れ、二人の話を聞いてくれます。

「殿下が恐ろしいです。殿下はお変わりになったと皆さん申しています」と率直に言うきりちゃんに、寧は「殿下はちっとも変わってない。みんなあの人のことわかっとらんの。あの人は昔から冷たい、怖い人。そうじゃなきゃ天下なんか取れないの」と静かに説明します。

寧の分析の確かさに、信繁は言葉もありません。

●落書の犯人が捕まらないため、フラストレーションを抱えた秀吉は一層狂気を強め、咎人が名乗り出るまでくじ引きで町人を磔にするとか言い出してしまいます。怖いよ。秀吉怖いよ。

露見しなければいいのです

●磔というのは大変凄惨な刑で、信繁、大谷刑部、石田治部は対応に苦慮します。そこに本願寺から道休が死んだという知らせが届き、信繁はとっさに道休を犯人に仕立て上げてことを収めることを提案します。

「道休は生きていても何の役にも立たないと申しおりました。でしたら、死んでから役に立ってもらいましょう

潔癖な三成さんは秀吉を騙すことに戸惑いますが、信繁は「露見しなければ良いのです」と押し通し、刑部も「腹をくくれ」と後押しします。

この「露見しなければ良い」という言葉は、1回目から何度も繰り返されますが、信繁の才略の本質なんでしょうか。

●で、そうは言ったものの、いざ死体の首を落とす段になると、信繁は戸惑い、大谷刑部が変わって脇差を抜きます。

ここでさりげなく、信繁が戦場で実際にがっつり戦って敵の首を挙げて出世してきた経験がないだろうということが念を押され、穏やかな文官に見える大谷刑部の方が、歴戦の武将であることが表現されます。

国盗りと下克上の時代が遠くなっているなあ。。

佐吉

●石田治部(と信繁)は、道休の首を秀吉の前に差し出します。

しかし秀吉は収まらず、「この者の親族を探し出して磔にせよ、隣近所も引っ捕えて畑をつぶして磔」と一層狂気を強めます。

●これを聞いた石田治部はとっさに死を賭した諫言を決意します。

「私からもお願いします」とか、もう信繁は全く何にもわかってねええええ!

治部は「お前は黙ってろ」と信繁を激しく叱りつけ、秀吉に詰め寄り「佐吉は正気でございます。乱心しているのは殿下の方」と改心を迫ります。

乱心と厳しく言うのですが、秀吉の乱心が辛くて辛くてしょうがない。元の聡明な秀吉に戻って欲しいという、治部の、ではなく佐吉の本心が透けて見えてつらい(嗚咽)。

●しかし、息子が父に必死に訴えるようなこの言葉は、秀吉には届きません。

佐吉にとって秀吉は慕わしい育ての親であり主君として永遠なのですが、

しかし、秀吉は、直接血の繋がった息子を持つことにより、血の繋がらない息子を当然のことように切り捨てます。

秀吉が石田治部少輔に切腹を申し付けた時、それを止めたのは正室である寧でした。

寧が現れてようやく秀吉の表情が変わります。

●寧は諄々と、「あんた、いい加減にしなさいよ。あんたがそうやって反応すればするほど、痛いとこつかれてるんだ、噂は本当なんだだって思わせてしまう。みんなそうやって勘ぐる、そんな道理がわからないほど耄碌したの?」と秀吉を諭します。

この「耄碌」という言葉に石田治部は肩を震わせ、彼が一番恐れているのは秀吉が耄碌することだとわかります。

豊臣家の未来が定まらないうちに秀吉が耄碌する。政権を支える官僚としても当然ですが、父の息子しての佐吉にとってはとても耐えられないことなんでしょうね(号泣)

●寧のとりなしと、現れた茶々の「殿下の子に決まっているでしょう」というちょっと怒ったような様子に秀吉はようやく激情を止めることができます。

茶々は一回「お腹の子の父は源次郎です」と、そこで言ってはいけない冗談で秀吉の毒気を抜くんですけど、あの瞬間、お茶の間の空気が凍ったにちがいないww

●寧は京都の人にお金をばらまいて慰撫することを、三成に頼みます。

●三ヶ月後、月満ちた茶々は、男の子を出産するのでした。

コミュニケーション

結局、落書の犯人は見つからず、「民が一様に同じ思いを抱いた」からあのような落書が書かれたんだ、という解釈に落ち着きました。

が、為政者を「種なし」と意地悪くからかう民と、それに「磔」で答える為政者という、どうしようもないコミュニケーションのズレ。

しかし、すべては石田治部の健気さを引き出すためのあれやこれやだったと言っても間違いはないでしょう。

「佐吉は正気でございます」には見る人の心を全部持っていくようなパワーがありました。切なすぎだよ!

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コメント

  1. ノノ より:

    いつも楽しくレビューとtogetterを拝見しております
    三成の真に恐れていたことについての考察、面白く読ませていただきました
    最近読んだとある方の別視点からの三成像まとめも興味深かったので、もしまだ未読でしたらご参考になるかと思いお知らせします

    http://togetter.com/li/980897
    (※私はこの発言者の方ではございません)

    見れば見るほどいろいろな解釈をしたくなる、真田丸は本当に面白い作品ですね
    今年はアンチョビ様を始め、さまざまな方の解釈を楽しみつつ、一年マラソンできるのを楽しみにしております

    • アンチョビ より:

      >ノノ様

      コメントありがとうございます。
      教えていただいたまとめを興味深く拝見しました。確か一部TLに流れてきまして、その時もあまりの鋭さに「おー!」となりました。まとめて読むとよくわかるなー!

      ネット時代の大河として、真田丸は視聴者とのコミュニケーションに成功していますよね〜!

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