真田丸 第十八回「上洛」レビュー〈2〉秀吉の苛烈さは人に転換を迫る。ペシャンコにされた昌幸にもたらされる福音は死んだはずの娘の帰還。

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後半では予想通り、パッパがなかなか辛い目にあいます。ほとんどの場面で抑制が効いていて、非常に上手かったのですが、でもだからこそ生まれるリアリティが辛かった。

しかし、一方で実績ある男性の苦難というのは、ドラマにおける第一級の見所でもあります。

武田勝頼、春日信達、室賀正武、そして上杉景勝と、いずれも役者さん達が最高に魅せてくれたところでしたね。

ちくしょおお!信長めぇ!とか、大博打の始まりじゃあ!とか、大名なんかいらん!!などなどのアクティブな名台詞を決めてきた草刈さんは、パッシブな苦難の場面をどう演じたのでしょうか。

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呆然とする昌幸

●いよいよ秀吉との対面の日、昌幸が緊張していそいそと献上品の確認をします。

ただでさえ中小企業の社長感を出してきていて辛いんですけど、そこに石田治部殿が現れ「献上品を検分致す」なんてことを言い出します。

嫌な予感しかしない。

意外といろいろありますね。

しかし、治部殿は「色が悪い、箱を変える」「(熊の毛皮が)臭い、後ろに押し込めておけ」などなど、コミュ症対応をしやがります。

贈り物をけなされるとか、なんかもうたまらないとこ突かれて、昌幸は呆然。

石田三成さんは、大好きな大谷刑部を少し見習った方がいいんじゃないですかね…

●昌幸はなんとかこの侮辱に耐えて、秀吉との面接に臨むのですが、なんと出てきたのは秀次っていう。

自分の息子と変わらない年齢の、実績のない若造、しかも見るからにお飾り。

思わず目が点になる昌幸が切ない。

(秀次さんの能力は一緒にお買い物に行かないとわからない特殊なものですからね……)

それでも一応本領安堵はしてもらったんですけど、面会時間も3分くらいの短さ。

織田信長にすら直接拝謁した昌幸はこれまた呆然とします。

●信幸は父親のためにものすごく怒りますが、「父上がないがしろにされたのだぞ!」という息子の言葉すら昌幸に突き刺さります。

肩を落とした昌幸はこらえきれずに「豊臣ってのは礼儀知らずだな。こりゃ長いことないな…」という呪詛の言葉を吐いてしまうんですけども、信繁は父親の気持ちに寄り添ってあげられず、「誰が聞いているかわかりませんから」と諌めざるを得ません。

散々手紙を差し止められていたのが効いてますね。

●ここで全てを救うように現れたのが大谷吉継殿です。

容姿も弁舌にも優れた華やかな人物に「どうしても直接お会いしたくて来ちゃいました。楠公再来と謳われてる真田安房守殿ですよね? 大ファンです」と言ってもらって、ようやく昌幸のメンタルが保たれます。

でも視聴者的には、思わずホッとする昌幸が悲しかったりもする。

刑部殿は、本人が本当に昌幸のファンということもあるんでしょうが、全てを察してフォローにきてくれたということもわかるからね…。

(ところで、刑部殿は、断っていた堺奉行を引き受けさせられたんですね)

小悪魔と契約、サイコパスの笑顔

●信繁はとうとう茶々に秀吉のとりなしを頼みます。

「いいけど、私の頼みも聞いてくれなくちゃダメよ?」という小悪魔の契約も甘んじて承諾する信繁。本気です。

●信繁は秀吉に直接昌幸に会ってくれるよう頼み込みます。頼むというか「真田をないがしろにしたら、内乱起こすよ?」と恫喝します。

ここで秀吉がニヤッとする。

「こいつは面白い小僧だなあ」から「俺を恫喝した報いを受けさせてやろうか」まで一瞬で考えたことがわかる笑顔で、むちゃくちゃ怖かった。豊臣ホラー劇場は継続中なんですね…

●翌日、秀吉は、昌幸が献上した熊の毛皮を羽織に仕立てて昌幸の前に現れます。

(ここも怖くて、佐吉が後ろの方に押し込んでいたものをわざわざ引っ張りださせるというのは、つまり何もかも見抜いてるってことなんだよね)

で、呆気にとられている昌幸の前にまで歩み寄ってきて、直接手を取り「わしはお主をどうしても家臣にしたかったんじゃ。頼りにしておるぞ」と、昌幸を持ち上げた後、おもむろに徳川の与力大名となることを命じます。

よりにもよって真田が一番もめている徳川の下にと、信繁は問いただしてしまいますが、秀吉は「その代わり真田の領地は徳川が守るから、悪い話じゃないじゃろ。帰りに駿河に寄って挨拶して来るといい」とさらっと流します。

●これが昌幸の最後の気力にトドメを刺すんですね。

独立勢力としてやってきた自負が突き崩され、独力で退けた徳川に豊臣の命で膝を屈することになり、昌幸は打ちひしがれます。

「死力を尽くしてやってきて、豊臣の家来となったと思ったら、豊臣の家来の家康のそのまた家来」「教えてくれ、儂はどこで間違ったんじゃ」と、パッパはヨレヨレの燃え滓みたいになって息子たちに問いかけます。

信幸も信繁も、父上は何も間違っていない、領主として領地を守ってきた実績は決してなくならない、と懸命に父親を励まします。

あれだけ父親への諫言を無視されてきた信幸が「だから私が言ったじゃないですか」的なことを全く言わず、父親を守るのが泣けすぎて、嫡男萌え〜とか言って自分をごまかすしかない…

でも嫡男て萌えますよね??

●駿河の徳川家康は、秀吉から真田家を徳川の与力大名に任じた知らせを受けて大喜びします。

「儂の前で安房守が頭をさげるのが見られるとは」と正信とともに唖々大笑してしまいますが、真田の本領安堵がお前の義務になるんだけど、そこらへんは大丈夫なのか?

松の帰還

●しかし、最後に昌幸に救いがもたらされます。信繁がことが落ち着くまで話すのを待っていた娘・松です。

記憶を失っているとはいえ、愛娘が生きていたことに昌幸は心から喜びます。

時にド汚ねぇ調略を仕掛ける真田安房守が、家族を愛する優しい父親であることは視聴者にとっての救いですが、こういうところで本人にも愛が救いになるんですね。。

●真田家の面々は松に記憶を取り戻させようと、真田の里での思い出話をすることに。

昌幸「お前は儂がおんぶすると、いっつも背中にションベン垂れるんじゃあ!」

信幸「姉上に沢蟹で鼻の頭を挟まれました!」

きり「木に登って下を通りかかる男性の品定めをいたしましたね!」

信繁「姉上のくれた蛙の干物がえらく気味悪かったです!」

ロクデモナイwww

●松というか、お藤さんは「姉上ってだいぶ変わりものね」ってドン引きですが、1回から登場してかなりフワフワした性格の人物として描かれ、突然舞台から消えた松さまの真実を聞いて、なんかすごく、納得がいったよwww

●結局松さまの記憶を取り戻すトリガーになったのは、きりちゃんの「カサカサの踵」でした。あの女子会猿芝居の踵カサカサトークは、当時でもかなり唐突なものに思ったけど、まさかここに向けてのロングフィードとは…

●そして松を失った時に独立を決意した昌幸が、独立を諦めざるを得なくなった時に松が帰還するという見事な脚本。

●昌幸は、辛いこともあれば良いこともある、世の中良くできている、と少しだけ前向きな気持ちで大坂を旅立つことができました。

●駿府で昌幸を迎えた家康に、昌幸は「これからは共に力を合わせてまいりましょう」と頭を下げ、家康も穏やかな様子で昌幸を歓待します。

が、それは最初だけ。

家康は我慢できずに大笑してしまい、昌幸はそれを獰猛な目つきで聞き、二人の間には第二ラウンドの鐘が鳴りひびてしまうのでした。

昌幸の転換点

昌幸回だったはずなのに、秀吉の怖さの際立ちが凄まじい回でしたね、いやはや。

信繁に恫喝された瞬間、真田を徳川の与力にすれば関東に反豊臣同盟が生じないと一瞬で考え、すぐさま実行に移す。

それをモフモフした毛皮を着てニコニコと…怖い。そしてものすごく面白かった。

昌幸はそんな秀吉に容赦なくペシャンコにされますが、でもだからこそ切り替え、そこからジリジリとエネルギーを溜め始めることができた、とも言える。

ヨレヨレになってしまう草刈さんが、松の帰還で息を吹き返すところ、よかったですね。

秀吉は怖いけれど、人に転換を促す、強力で前向きな力でもあったんだなあ。

そう、多分、この時までは。

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