花燃ゆ 第十七回「松蔭、最期の言葉」感想

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○萩から江戸へ連行された松蔭は、伝馬町の牢獄につながれます。
のんびりした野山獄とは違って、レトロな映画に出てくるような、畳を積み上げた典型的牢名主(これが、有名な沼崎吉五郎ですね)なんかもいたりして。
江戸の獄での松蔭の世話を命じられたのは高杉晋作で、吉五郎に取り上げられた硯を取り返すためのお金を用立てたり、松蔭の取り調べの様子を伊之助&周布様に知らせたりしています。

○幕府は、松蔭を取り調べはするものの、特に証拠があるわけでもないので、形ばかりの詮議で終わりそうな雰囲気が濃厚です。
萩の伊之助たちはほっとして、このまま余計なことを言わずに詮議を終わるよう、高杉を通して松蔭に伝えようとします。
しかし跡取り息子が罪人・松蔭の世話をさせられていることに危機感を覚えた高杉パパが、婚儀の話が進んでいるので晋作を呼び戻したいと、伊之助&周布さまに土下座
もちろん本当に婚儀の話が進んでいるわけではなく、晋作を松蔭から引き離したいパパの策略ですが、文ちゃんに比べてなんて素朴な策略よ…。ほのぼのしますね。
高杉パパは、息子を萩につなぎ止めるために、美人で気だての良い嫁を捜せと。
ここで城下一の美人・井上雅が顔見せです。

○寅次郎から特に有効な証言を引き出す事ができない幕府は、梅田雲浜を締め上げ、雲浜は獄死してしまいます。
それくらい幕府は松蔭についてはなんにも掴んでなかったんで、このままだと通り一遍の取り調べで終わったはずでした。
そんなとき、牢名主・吉五郎はどういうつもりか「取り調べをしている連中が、あんたを褒めだしたら気をつけろ。油断させていろいろ聞き出すつもりだ」と無料でアドバイスします。
きたよ、フラグが。
で、後日の取り調べで担当奉行が本当に松蔭を褒め出しちゃう。わかりやすい。

ピンと来た松蔭先生は、気をつけるどころか、キタコレとばかりに、実は私は死罪に値する罪をおかしております、老中・間部さまを直接おいさめする計画を立ててました、と自分から罪状をベラベラとしゃべっちまいます。
びっくりした取り調べ担当奉行「お諌めして、聞き入れられないときはどうするつもりであったのか!」と真っ正直に詰め寄りますが、松陰先生はこういう直情的ものいいをかわすのはお手の物なので、「そこまでは考えておりませんなんだ」とのらりくらりして終了。

○この取り調べの報告をうけた井伊大老は「黙っていれば一通りの詮議ですんでものを、何故」と、松蔭先生の作戦に見事に引っかかってしまいます。って、安い大老だなあ、おい。。

○江戸の高杉からは松蔭の詮議の報告が逐次もたらされており、間部誘拐について松蔭が自ら話したことも知らされ、文ちゃんたちはやきもき。
これ以上余計なことをしゃべったら危ないと、伊之助が松蔭に釘を刺すために江戸に向かうことになります。
そのとき、伊之助の妻・寿が、夫の旅支度をさっと取り出すのは良かったですね。武士の妻らしく、非常に凛々しく、気品のある演技でした。でも寿さんは描かれ方に一貫性がなく、ここで持ち上げられてもあとで落とされるから心配だ…。

○岩山獄中の入江兄弟を見舞った文ちゃんと入江兄弟の妹・澄ちゃん。獄の外では前原一誠が二人を待っていました。
前原は自分のせいで入江兄弟が捕まったことを謝りますが、当然のことながら、澄ちゃんの怒りを買うだけ。さらに、そもそもこんなことになったのは文の兄上のせいだよね? と澄ちゃんのはげしい怒りが飛び火して(当然なんですけど)、文ちゃんとも絶交されてしまいます。だよねー。

○そんな文ちゃん、前原一誠に松下村塾に戻るよう頼みます。
前原さんは、松蔭が江戸に連行された原因を作った自分、と文ちゃんの申し出を断りますが、「そんな前原さんだから、道に迷った塾生がここに戻ってきたときに力になってほしい」と文ちゃん節を効かせて説得です。はあ、またこれか。

○江戸についた伊之助は、旅の埃を落とす間も惜しみ、松蔭のもとに駆けつけます。
松蔭は伊之助を前に、井伊に会いたかった、井伊を前に思い切り語りたかった、自分の言葉はついに井伊に届かなかった、悔しい、とマジ泣き
塾生たちに対しては、いつもキリリとさわやかな松陰先生ですが、友人で義兄弟の伊之助には地を出すところにちょっと萌え。
萌えなんで、伊之助は、「生きていてくれればそれでいい」なんていう文ちゃんとはちょっと関係性が違っていまして、「諦めるな、君の魂が不朽のものになる望みはまだある」と松蔭を励まします。
そう、日本人の究極の価値観は「後世に名を残す」なんですよ。
もうにっちもさっちもいかなくなると、だいたいここに行き着くんですが、松蔭おまえもか。いやわかってたけど。

○伊之助は、松蔭を止めにきたはずなのに焚き付けてしまったと、複雑な気持ちをぼやきますが、松蔭は自分の気持ちを理解してもらえた事に勇気づけられます。松蔭はなかなか理解してもらえないタイプの人間だからね。
松蔭は死の準備をはじめます。

○遺言状である「留魂録」を2通書き上げ、1通を牢名主の吉五郎に預けます。
親父の策略で萩に戻ることになり、自分にはまだなすべきことが見つからないのに、先生と離れるのは辛いです、と泣き崩れる高杉には、「君の心にはいつでも主君への忠義があった。自分が大切に思うものを大切にすれば、いつか志が見つかります」と奇兵隊のアイデアを授けて慰めます。

○そんなある日の松陰先生の取り調べに、高い身分の武士が同席します。そう、御簾の奥に座していたのは松蔭先生の罠にはまって、のこのことうとうやってきてしまった彦根藩主で幕府の大老・井伊直弼です。松蔭、恐ろしい子。

○待望の井伊直弼本人を前にして、松蔭は目をキラキラさせながら全力で井伊を煽ります。
曰く、徳川家が200年余も日本を治めてきたのは将軍の徳によるもので、徳ではなく力で政治をしようとする井伊大老にはこの国の未来を預けることができない、と。

○個人名を出しての煽りに思わず奥から井伊大老もお白州に乱入
井伊大老からすると、自分が圧政を布いているっていうけど、そもそもその原因は松蔭のような下級藩士が身分をわきまえずに秩序を乱しているから。
秩序を欠いて国を治めることはできん(ドヤァ
しかし、松蔭はそれに対して「それはあんたたち上級武士が、身分を固定化して、限られた人間の間でこちゃこちゃと政治をしてるからだよね? 外国からの脅威に少ない人材で対抗しようとして、できてないよね? このままだと国が滅びるんじゃないの?」と応じます。
つまり、譜代大名と直参旗本っていう家康時代の功臣のみが権力を持ち続ける、江戸幕府の仕組みそれ自体を批判します。
対する直弼は既得権益層の頂点である譜代大名の筆頭。
そりゃ「ゆるさん」となりますよってな展開です。

○ここで松蔭が伊之助に成敗されたらものすごく斬新で面白かったと思うんですが、この大河の悪いところはそこまでの思い切りもできないところ。もう失うものなんか何もないでしょうが!

○処刑の日、松蔭の魂が萩の両親を訪ねるシーンが挿入されます。
父、母、それぞれのところに松蔭が現れて腹が減ったとか言うんですが、ここは子を亡くした、というか亡くすであろうと予感しながら平常心を保って生きていた両親の気持ちを思うと切ない…んだけど、杉家の両親なので、ちょっと冷めてみたりして。

○萩には、松蔭の遺品として、遺言である留魂録と遺髪、筆と硯、金子重輔の残した金の釦が、伊之助によって持ち帰られました。
杉家は静かにそれを受け取ります。
松蔭の死をもって、安政の大獄がようやく(?)終わりました。

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やるだろうとは思っていたが

本当にやりやがりましたね。井伊大老と松蔭の直接対決。いやいやいや、ないからー!

まあ100%フィクションなので、ここではその是非はいいません。

あ、統治のトップが徳でもって治めているのに、その下で実際に統治している連中が間違ってる、という考え方は、将軍&直弼をことを言いながら、天皇&将軍のことも暗に指摘していますね。それが後の討幕につながっていく、という伏線ははってありましたね。

魂を不朽とする望み

むしろ面白かったのは、伊之助のいった「魂を不朽とする望み」ですね。

この「死して名を残す」という思想は、日本史にはちょくちょく出てきまして、「名を残すために美しく死ぬ」っていうのは日本文化の肝の一つだと思うのですよ。

実際に吉田松陰は、弟子たちが明治維新の原動力となることで不朽の魂となり、神にまで祀られることになり、後世に長く語り継がれ、尊敬されて「不朽の魂」になります。

しかしこの思想は、次第にねじれていって、死の過剰な美化とともに、裏返って命がものすごく安くなってしまうんですね。

言うまでもなく第二次世界大戦から太平洋戦争時の日本のことですが、松蔭の死が明治維新の原動力となったように、亡国の遠因ともなったんだなあと、爆笑しながらも寒々しく思いました。

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