花燃ゆ 第十五回「塾を守れ!」感想

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○野山獄に再び収監された寅次郎は、獄中から塾生たちに働きかけて、なんとか間部老中を討とうとがんばってます
文ちゃん、梅兄さま、敏三郎は寅次郎の身を案じますが、寅次郎の視界に家族はもう入っていません。
文ちゃんに対する態度も他人行儀で、目も合わせません。大分壊れてきてますね。

○江戸では井伊大老&間部老中は要注意人物として、吉田松陰の名前をあげ、証拠がつかめればすぐに捕獲、という話をしていました。
安政の大獄の嵐が吹き荒れています、といいたいところですが、相変わらず時代背景の説明が薄いので、どうにも緊張感が足りません。
拷問に耐える梅田雲浜先生だけでは幕末の雰囲気って伝わらないんだよね。こういうところは非常に残念です。

○そんな中、江戸の久坂、高杉の元に松蔭先生からの手紙が届きます。
なんとしてでも間部を殺るから協力して」という内容にドン引きする久坂・高杉。
ヒガシ小五郎が、もうこんな手紙のやり取りはするな、このままだと松陰先生が捕まる、と告げます。いやほんとだよね。
久坂くんは「先生、ちょっと落ち着いて。時期を待って」と高杉と連名の血判状を返信し、なんとか松蔭をとどめようとします。

○萩の塾生たちはチンピラよろしく集団で小田村家をたずね、「松蔭先生が獄につながれ、村塾がなくなったのはお前のせいじゃ」と伊之助を糾弾しますが、すっかり図太くなった伊之助は「お前たちのうちの一人でも、本当に自分の頭で考えて行動してるやつはおるんか?」と逆に反論します。
伊之助はやってきた塾生たち一人一人の名前と境遇を覚えていて、彼らが松蔭の言葉にただ振り回されているだけなのを見抜き、「自分の頭で考えて、筋を通して行動すれば、きっと藩はお前たちの言葉を聞いてくれる」と教師らしい正論で塾生たちを帰します。
ここは、お母さんと喧嘩して河原で泣いてた若造が、ほんと成長したよね、とちょっと感慨深いシーンでした。

○獄中にあって尚意気盛ん(すぎ)な松蔭先生ですが、前回決別した吉田稔麿くんからは音沙汰なく、塾生たちもどうも思うようにならず、手紙の返事をよこした久坂・高杉は腰が引けてるわで、激しくいらだち、だんだん壊れていきます。
あ、塾生たちが思うようにならないのは、桂の指示で松蔭から塾生への手紙が杉家で保留されることになってて、コミュニケーションが出来ない状態になってるからです。
その上さらに、松蔭はマジで危ない、と判断した長州藩から、硯と筆を取り上げられてしまいます。
これにより、松蔭のダメージは深刻化
これがあのエレガントな伊勢谷さんなの?と思うくらい、獣じみたメイクで、「どうしてみんなわかってくれんのか」「日本をまもらねば…」と焦燥とし、思わず牢屋の建て付け箪笥の扉に「至誠」と刻み込みこんでしまう松蔭。
1話でも似たようなエピがありましたが、「花燃ゆ」の松蔭は懊悩が極まると電波をキャッチするタイプの人のようで…でもここも見所だったと思います(メイク的な意味で)。

○杉家では、塾生との手紙がダメなら、家族で手紙を書いてやればいいんじゃねってことになってました。
どんなことがあっても寅次郎を温かく支える家族かもしれませんが、杉家の図太さって化け物じみてます。

○その頃、萩に残っている塾生たちは、小さな神社の境内でたむろってました。
この子たちはかわいそうなことに、議論する場所や、自分たちの思いを受け止めてくれる人がいなくなって、身の置場がないんですね。
劇中の松下村塾が英俊の集まる学堂だったかどうかは疑問ですけれど、とりあえずこういう青年たちの重要なガス抜きの場所ではありました。
学童になじめない子供のようで、なんだか居たたまれなかったわ…。

○そんな塾生たちに、杉家の末弟・敏三郎が松蔭が筆を取り上げられる前に書いた手紙を届けます。
この手紙は杉家に保留されていたもので、「参勤交代で江戸に向かう藩主を伏見で誘拐して京都にいき、天子様にお会いして攘夷の旗揚げをしろ」というとんでもないものでした。

○これまでも、日本国が外国に対抗できる力を十分につけてから開国すべき、というアホな主張をしていたとおり、松陰先生はいつの間にか、現実を知らない理想主義者、じゃあ具体的にどうするの?っていう部分を全く考えない人になってしまっていました。
まあ蟄居も長いし、元々学者みたいなものだし、優秀なだけに頭でっかちになってしまったんでしょうね。

○そうは言っても、尊敬する松蔭の指示です。
塾生たちのうち、入江九一が、うちは兄弟二人だから一人死んでもなんとかなるじゃろ、と先生のとんでも作戦を決行すると手を挙げます。
が、どうせやるなら私がやります、兄上はやさしい方だから家を守ってください、と弟の野村靖が兄を止め、そこに妹のすみちゃんが飛び込んできて兄弟を止めます。
しかし後日、弟・野村靖は脱藩して伏見に向かってしまいます。「寅兄は塾生を危ない目に遭わせたりしないから」とすみちゃんに話していた文ちゃんは、「嘘つき!」と責められてしまいます。
尚、前原一誠はさすがにいろいろわかっていて、序盤で殴り込みにいった伊之助に、今度は頭を下げて助けを求めます。

○そんな中、野山獄の松蔭の元を、弟の敏三郎がたずねます。
なぜか旅支度の敏三郎は、自分の言葉が伝えられない、伝わらないのは本当に辛い事だ、よくわかる、と松蔭を慰めます。
聾唖の末弟の言葉に、大分おかしくなっていた松蔭も正気を取り戻します。
松蔭は狷のとれた、人間らしい顔に(メイクに)に戻って、自分の気持ちをわかってくれる人いた、とほっとした顔をします。
で、ここからがすごいのですが、敏三郎は、私は兄上を信じます、兄上の作戦は私が実行しますから、まかせてください、きっとうまく行きます、とすっと立ち上がり、松蔭の前から立ち去ってしまうのです。ええー!
松蔭は言葉もないくらいびっくりし、大慌てで牢番を呼び、敏三郎を止めてもらいます。
いやー、見てるこっちもびっくりしたよ!

○このエピで、松蔭は自分の状況をはじめて客観的に分析します。この展開はとってもおもしろかった。
塾生にけしかけた作戦を敏三郎が実行すると言ったことで、自分の考えがどれだけ現実味がないかを理解するんですね。
そして松蔭は、こうなったら自分の思想を伝えるために死のう、と決意します。

○野村靖には藩の追っ手がかかり、入江九一は自首、二人は岩倉獄に繋がれることになります(伊之助談)。
文と伊之助は松蔭をたずねて、無茶をしないよう、日常に戻るよう説得します。
帰ってきてください、家族で穏やかに、静かに行きていきましょう」と文ちゃんは涙ながらに呼びかけますが、すでに深く死を覚悟した松蔭は、「それは僕の人生じゃない」と拒むのでした。

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まさか敏三郎が

最初の頃は伊之助って人物がうざったくて仕方なかったんですよ。
今も多少そういう気持ちはありますけれど、今回、彼が不器用ながらも成長していく姿はなかなかいいなあと思いました。

寅次郎を守るためにあれやこれやがんばって、本意ではないこともさんざんやってきて、寅次郎の妹である妻とはあんまりうまくいってないが、しかし順調に図太くなっている。夭折の天才である吉田松陰と比べると、最終的には群馬県令って人で、知名度も低いし、男性の成長ストーリーとしてもすごく平凡なんですけど、逆にそれがいい。

松蔭や塾生たちが拙速なテロリズムに走っていく中、伊之助の堅実さが効果的になってきたっていうのが面白い。

伊之助の成長と反比例して、松蔭は現実性を失っていき、ほとんど狂気寸前にまでなっていきます。

しかし、そんな彼の目を覚まさせるのは、カウンターパートとなった伊之助でも、主人公の文でもなく、末弟の天然さでした。

この時までに松蔭は大分おかしくなっていて、塾生たちに老中を誘拐しろとか、天子様にお会いしろ、なんて指示を出す訳ですが、そんな大事を実行するための現実的な施策はまるでありません。
それなのに、自分のプランを実行しない、自分に同意しない塾生たちを、怖じ気づいていると罵る。
しかし、敏三郎が出てきた事で、敏三郎に出来るはずがないことを、何故塾生なら出来ると思っていたのか、という自分の過ちに気がつく。

松蔭はここでようやく客観性を取り戻します。

と同時に、冷静になった松蔭は、これから自分に出来ることは効果的に死ぬ事だけ、ということを悟ります。

後世の私たちには、松蔭の死が長州藩のトラウマになったことを知っていますが、自分の思想を信じて死ねば、それで人を動かせるかもしれない、というのは松蔭にとって確信ではなくて、一縷の望みだった(このドラマでは)。
はかない希望に賭けて死ぬと決意する時に狂気と繊細さが噴出する。ここはすごく良かったと思います。

ついに文ちゃんが敗れる

で、文ちゃんはそんな松蔭を懸命に説得するわけです。
涙も流すし、兄の硯と筆というツールを使って、兄上にはまだ「言葉」がありますよね?(チラッ…みたいなこともする。「好きです。兄上の言葉が(倒置法)」とか「英雄になんてならなくていい(逃げ道作り)」とか、持てるスキルのすべてを駆使した小芝居の最後、松蔭先生が文ちゃんの頬に手を宛てたときの文ちゃんのドヤ顔…(!)。
またこれかよ、この女は」と、心底イラっ

が、松陰先生がまさかの拒否。

最後に文と伊之助が泣き崩れてましたが、見ているこっちは死ににいく松蔭をむしろ応援しちゃいましたよ。

「それは僕の人生じゃない」って、この文ちゃんと松蔭の関係からしか生まれない台詞だと思いました。

ではでは、ようやく面白くなってきたところで、来週は脚本家が……アデュ〜!

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