花燃ゆ 第十三回「コレラと爆弾」感想

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○久坂くんを江戸に送り出した後、松下村塾には前原一誠が戻り、さらに長崎で兵学を学んだ小野為八が加わりました。小野は藩医の家に生まれながら、兵学を志し、新しい武器「地雷火」を作り上げようと言うちょっと変わった人物です。

○その頃、萩ではコロリ病(コレラ)が流行しつつありました。
文ちゃんが城下で知り合った少女きくちゃんのおっかさんも、コレラに感染し、小野為八の父親の医院に運び込まれていました。
コレラは当時の医療レベルでは死の病です。きくちゃんも文ちゃんもおっかさんに近づくことさえできません。

○ドラマの中で起こった安政5年(1858)の流行は、実際のところ、日本における3回目のコレラ流行なのだそうなのですが、寅次郎も大老・井伊直弼も異国からもたらされた病、という認識。
認識は同じなんだけど、病に立ち向かうには異国の知識が必要(直弼)、異国に振り回されるのが怖い(寅次郎)と、反応はそれぞれ。
同じ事象を異なる人物の目から複層的に描く、すごくいいんだけど、これまでがあまりに薄っぺらいドラマ作りだったので、いきなり大河っぽい脚本に大河っぽい演出をされても気持ちがついていかない。
大河詐欺っていうかさ、ここで感心してもどうせまた裏切られるしさ…。

○文ちゃんは、伊之助の実兄からコレラ対策が書かれた文献を借りて、塾に持ち帰ります。
で、ここで塾生のお風呂シーンが入るのですが、まるで緊張感のないきったねえ風呂シーンで…こんなもん見たくなかったorz
花燃ゆって大河詐欺の上にイケメン詐欺なんですけど、ここもどうにかしてほしい。

○江戸幕府はアメリカの圧力に負けて、朝廷に許可を得ずにアメリカとの間に条約を結んでしまいます。
長州藩の江戸屋敷では、久坂くんがこれからは事件は京都で起こる、自分を京都に行かせてくれ、と桂小五郎に土下座。
しかし医学修養という名目で江戸に来ている以上、桂は許可を出せません。
「こん大バカもんが!」と怒鳴るヒガシ、しびれた〜〜。
ヒガシ小五郎だと確実に明治維新が来そうで安心です。俺たちのヒガシならやってくれる。
怒鳴られた久坂くんは無許可で京都に向かってしまいます。

○一方、寅次郎も、条約の締結に憤り、「将軍討つべし」という建白書を書きあげて、藩に提出します。
伊之助も同じ気持ちで藩にいろいろ書いて提出するんだけど、寅次郎の過激さに取りなし側に回る事に。
寅次郎の建白書はなかったことにされますが、内容が内容だけに周布様、長井雅楽、伊之助はかなりショックを受けます。
この建白書に至るまでの流れでは、寅次郎が塾生と一緒に浮き足立ってしまった感じもあるんですが、寅次郎本人も塾生相手に磨きに磨いた煽りスキルで自分自身を追い込んでいく、どんどん危うくなっていきます。
伊之助は寅次郎をなだめに杉家を訪ねますが、寅次郎にブレーキが利かなくなりつつある事を見て取ります。

○文ちゃんは、きくちゃんがおっかさんが亡くなってもやっていけるようにと、富永有隣とともに字を教えはじめます。
コレラの流行に対しては何もできないけれど、世間が大変なときだから自分に出来る事を何かする、というドラマ序盤のエピのリピートですね。
富永有隣と文ちゃんときくちゃんの手習いのシーンは、舅と嫁と孫みたいでほのぼの。今回はここが一番の和みシーンでした。

○久坂くんは京都に到着し、梅田雲浜の攘夷派サロンに参加します。
藩命に背き、処罰を覚悟で京都にやってきた、と持ち上げられてまんざらでもない感じの久坂くん。ばかめ。
萩では高杉たちが頭を抱えていますが、(後の宰相)伊藤利助が「これからの時代は天子様のいらっしゃる京都が主役」という意見を城下に流し、久坂くんの藩命違反をうやむやにし、自分たちも便乗して京都に向かおう、と提案。
このシーンは、下級武士だちが情報をうまく使って自分の藩を揺さぶって行動していく情報戦の始まりと、ついでに利助の政治家としての能力も垣間見させて、すごく良かったと思います。

○萩ではコレラの流行により、人々がどんどん亡くなっていきます。
きくちゃんのおっかさんも亡くなりました。
久坂くんからの手紙も途絶えています。杉家の畑から見える、遺骸を火葬する白い煙を見ながら、沈痛に「当たり前の生活の大切さ」を語る文ちゃんですが、これまでのエピの積み重ねが足りないので滑る滑る
井上真央ちゃんもやりにくそうでしたね。
この台詞は、かなりの苦難に喘いでないと、そんで先の見通しがなんにも立ってない状態じゃないと、説得力は出ませんから、13回目くらいじゃまだまだまだまだ
だいたい台詞としてはありきたりすぎだしね。シチュエーションがんばれ。

○そんなこんなで、萩から京都に人を送る事になり、高杉が京都にやってきます。
高杉はさっそく久坂を訪ねて、藩命違反のことやらいろいろ言いますが、久坂くんはやっとチャンスが巡ってきたんだ!と聞く耳を持ちません。
この男の、何事かを成し遂げたい、という願望の根深さよ。
高杉も諦めて、せめて文さんに手紙を書け、と告げて立ち去ります。

○松下村塾では小野為八が地雷火を完成させ、相談の上、その日の夜明けにはく爆発実験を行うことになります。
しかし、コレラ患者を収容し、面倒を見ていた小野為八の父がコレラに倒れます。
末期の父を見舞う為八ですが、間もなくお父さんは亡くなってしまいます。「わしは異国に負けたらしい」と言い残して。

○文は、自分たちの生活を変えたのが「異国」なのかと寅次郎に尋ねます。
その際の台詞が、5回で文ちゃんが心の底から絞り出した「教えてつかぁさい」のリピになってるんですけども(「教えてつかぁさい、これも異国のせいなんですか? だから戦うんですか?」)、今回は、寅次郎の「戦うとは屈しない心を持つこと」の呼び水でしかなかったので、これまたつるつるの上滑りにしかなりませんでした。
今回は、ドラマ序盤の台詞を意図的に盛り込んでるんだと思いますが、あんまり効果的じゃないなあ。

○小野為八は、父のかわりに地雷火の実験を見届けてほしい、足を地面につかなければいいんです、私が背負います、と松蔭先生を杉家から連れ出します。
文は、兄の代わりに自分が行くと申し出ますが、断られます。
もう文では代わりにならないところに、松蔭と塾生たちは行きつつあることを象徴するエピです。

○久しぶりの外に出た松蔭は、次第に気持ちが解放されていきます。
ついに小野の背中から降り、裸足で地面を踏みしめて自分で駆け出す松蔭。
畑に棒のように立つ文。
やがて上がる地雷火の噴煙は、コレラで亡くなった人々を荼毘に付す、白々とした柴の煙とはまったく異なる、黒く激しいものなのでした。
ここはアングラ映画のような斬新な演出になっていて、これからの運命を予感させるような、不吉な演出になっていました。

○ラストは文ちゃんの元に久坂くんから手紙が届きます。
久坂くんの「幸せそうなお前をいつまでも見ていたかった」という言葉によって、文ちゃんの幸せな時間の終わりを告げるのでした。
いろいろ言いたい事もありますが、真央ちゃんの演技がとっても良くて、ここはしみじみしてしまいました。すみません、単純で。でもやっぱり真央ちゃんはいいわあ。

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演出も脚本も悪くはなかったが

今回は緊張感もあり、演出も脚本もいろいろ考えて表現を模索していることが伝わってきて、評価したい回だと思いました。
しかし、これまでのドラマづくりに一貫性がなさすぎる上に、この一回に要素を盛り込みすぎた感じがあり、全体の出来は決して良くないと思います。

とくにひどかったのが、レビューにも書きましたが、中盤、文ちゃんが高杉に語る「こんなことになってわかる、当たり前の生活がどんだけ宝物だったか」と、寅兄に文ちゃんが言う「教えてつかぁさい」で、稚拙な演出と台詞ですね。
視聴者がこれに共感できるほどのエピの積み重ねがない気がする。少なくとも私にはなかった。

それでも今回はちょっと可能性を感じました。
ここ数年のテレビドラマの演出って、良くも悪くも舞台ものの影響を強く受けてますが、大河ドラマはその演出方法を使わず、かたくなに過去の大河ドラマ的な演出を守ってきました。はっきり言えば、大河ドラマ風の大河ドラマを作るべく、努力をしていた。
でも今回、私は、もう無理に、大河ドラマ風の大河ドラマを作らなくていいんじゃないかなあ、と思いましたよ。
過去をトレースする必要はない、製作陣がまず自分たちが面白いと思うように作ってほしい、その方がまだおもしろくなりそうです。
ただその分、歴史の勉強はもっとがっつりやらないとダメだと思いますけどね。

まあなんのかんのいいつつ、ストーリーが動き出しました。
桜田門外の変では、歴史秘話ヒストリアで取り上げられた例の桜の銃が使われるんでしょうか。そういえば、今回、桂ヒガシが「大老を止められるのは斉昭さまだけ」みたいなこと言ってましたね。もしや伏線?

では、また来週もがんばりましょう。アデュ〜!

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